仕事が終わったら、家に帰る前に美代子の暖簾をくぐり、大将と女将さんの顔を見て「あーうまい!」と一杯やる。そんな日課を10年、20年と続ける常連が美代子には多い。もつ煮込みや、茶碗蒸し、揚げ出し豆腐など、家庭ではなかなかできない、手間暇かけた料理をリーズナブルな値段で提供する。「開店した35年前からメニューも値段も一緒。お客さんと話すことが幸せだから儲けは二の次かな?」と女将さんが笑う。常連客が連れてきた若いお客が歳を重ねて、また若手を連れてくる。そうして、美代子をもうひとつの我が家とする人が切れずにつながっている。